縦深攻撃は第二次大戦史やソ連史に興味のある方、ハーツオブアイアン等の戦略ゲームのプレイヤーには馴染みのある言葉ですが、今一度この意味を理解すると共にサバイバルゲームに応用してみましょう。
戦術史に興味のない方はサバゲーの話に入る2ページ目まで読み飛ばしてもらっても大丈夫です。
縦深攻撃とは?
縦深攻撃は無停止攻撃とも呼ばれます。
戦略レベルで軍隊を運用する際に用いられる「縦深」という言葉は、最前線から最後部の司令部までミルフィーユのように何重にも折り重なった軍隊の層、およびその距離を指します。
最前線にはライフルや機関銃を持った兵士がおり、その後ろには砲兵、通信兵、兵営、補給線、司令部という長い軍人の列ができています。
基本的に最前線の後ろには予備の兵士もいますので、最前線が倒されそうになったり、倒されたときには予備の兵士を前線に送り込みます。そうやって前線の兵隊が時間を稼いでいる間に上図の人たちが少しずつ後退して陣地と立て直しつつ反撃の準備を行います。
そうすれば敵は戦線を立て直すことができなくなり、一気に敵軍を崩壊させることができます。
それができりゃあ苦労しねえよと言いたくなる戦術ですが、縦深攻撃は「赤いナポレオン」の異名を持つミハイル・トハチェフスキーによって理論化されました。彼は42歳にして元帥に昇進。大粛清の犠牲となり44歳の若さで粛清に遭い命を落としますが、彼が遺した理論は現代においても有効な戦術として現代もロシア陸軍ドクトリンの中核を担っています。
縦深攻撃は1944年6月にソ連軍がドイツ軍に対して決行したバグラチオン作戦で一つの完成形となります。幅1000kmの戦線を700km前進させるという空前の作戦によって、ソ連軍は多大な犠牲を払いながらもドイツ軍の東部戦線を崩壊させることに成功します。
バグラチオン作戦のすごいところ
この作戦は敵軍をはるかに凌ぐ火力と兵力を「間断なく」「大規模に」「長距離に」わたって投射した点が歴史上のその他の作戦に対して傑出しています。
当然敵を凌駕する戦力を保持していればいつかは勝利することが可能となりますが、戦闘は基本的に防御側が有利であることから、中途半端な戦力を敵にぶつけ続けてもいたずらに戦力を消耗するばかりでなかなか戦略的な目標を達成することができません。
防御側は塹壕や要塞で定点にとどまりながら戦力を増強できるのに対して、攻撃側は敵の攻撃に身を曝しながら突撃する必要があります。また、防御側は退却すれば後方からの補給を得られるのに対して、攻撃側は進撃すれば補給線を最前線まで伸ばさなければなりません。
ということは、防衛側はゆっくり退却すれば常に補給を得ながら100%の戦力で戦えるのに対して、攻撃側は進めば進むほど部隊が疲弊していくことになります。これがドイツ軍が1942年に圧倒的な戦力差を持ちながらもモスクワを陥落させられなかった理由です。
以上の事柄から、退却しながらの防衛に対して進撃しながらの攻勢は軍事的に難易度が高いことがわかります。
その原則をぶっ壊して巨大な東部戦線を破壊したのがバグラチオン作戦(縦深攻撃)のすごいところです。縦深攻撃はやられる側からすると
・止められなくて
・退却できない