真夏のサバゲーは地獄です。
放っておいても殺人的に暑い日本の真夏に一日中エアガンを抱えて走り回るのだから正気の沙汰ではありません。
それでもサバゲーするとなると後述する3つの理由から、輪をかけて熱中症、日射病に注意しなければなりません。
本稿では筆者が夏場にサバゲーするときにしている対策と注意点を紹介します。
熱中症をナメてはいけない
まず、熱中症は危険な急性症状です。
熱中症が悪化すると、擦り傷やおたふく風邪から回復するときのように身体の自然な回復能力で治癒することができなくなります。生卵からゆで卵を作ることは簡単ですが、ゆで卵を冷やしても生卵には戻りません。
体温が異常値に達するということは排熱(体表と汗の気化熱を使った熱交換)が発熱に追いつかなくなっているということです。
真夏の暑さに耐えてなんぼのもんちゃうんか!とかいう精神論の世界ではありません。ゆで卵になってしまったら元の身体に戻ることができなくなってしまいます。
参考までに、夏場は気候が乾燥していて最高気温が30℃を超えることがめったにないニュージーランドですら、熱中症を回避するために開校を後ろ倒しにする施策を取っています。
それを念頭に真夏のサバゲー対策を講じていきましょう。
夏サバゲーが危ない3つの理由
無理して厚着をする
サバゲーは半分スポーツ、半分ロマンの遊びです。なので夏場でも自分の装備スタイルを貫きたい人はたくさんいます。
先月揃えたばかりの陸自装備を使いたい!
気持ちはわかりますが、本当に35℃の猛暑日に一日中迷彩服にプレートキャリア姿で過ごすつもりですか?
筆者も人のことは言えませんが、日ごろ運動不足な成人がサバゲーフィールドで厚着していたところで誰かに監督してもらえるわけでもありません。定例会では誰もが他人なので、本当に無理になってぶっ倒れるまで誰も自分の体調を気にしてはくれません。
そしてぶっ倒れたときにはゆで卵化が始まっているかもしれません。
そもそも真夏にサバゲーすること自体が自己責任のアクティビティであると理解する必要があります。
水分補給を忘れがち
サバゲー中に一番怖いのが水分補給忘れです。サバゲーフィールドのゲーム回しは基本的に季節によって変わりません。なので、夏場も冬場も同じペースでゲームは回ります。
夏場になると基本的にスタッフは「無理はしないでくれ」、「水分補給はしっかりしてくれ」とアナウンスしますが、夏場になるとその手のアナウンスはどこでもされているので誰しも馬耳東風です。
ゲーム回しの早いフィールドでは、ゲーム終了までプレーしていると、休憩時間は弾込めくらいしかできないこともしばしばあります。
弾込めをしているとフィールドのアナウンスで
あと1分でフィールドイン締め切りまーす!
やべえ!とりあえずマガジンポーチ持っていくぞ!
これが危ない。
そこまで汗かかなくなってきたし、暑さに慣れてきたかなw
病院、AEDが遠い
サバゲーフィールドから病院は遠いことが多いです。サバゲーフィールドは数千坪規模の土地を確保する必要がある都合上、社会インフラへのアクセスが悪い場合がほとんどです。
多くのフィールドが「〇〇ICから車で15分の好アクセス!」とか謳っているくらいなので、一部のインドアフィールドを除いては駅徒歩数分のアクセスなど期待できません。
万が一熱中症で倒れたとして、救急車を呼んでから現場に救急車が到着するまでの所要時間は日本の平均所要時間(8.7分)を大きく上回ります。(出典:法務省)
というのも、救急車は出動の約65%を急病患者、約50%を高齢者に対して行っていることから、到着所要時間の分母の多くは自宅のある住宅街、つまり病院の近くでの急病が構成していると考えられます。
AEDがない
AED、設置完了! pic.twitter.com/9BfFyAiIIz
— サバイバルゲームフィールド KILLING-HOUSE(キリングハウス) (@house_killing) July 27, 2020
筆者はその他にもエクストリーム系アクティビティを行うため、最寄りのAEDの位置を常に確認する癖があるのですが、サバゲーフィールドおよびその近隣にはAEDがないケースがとても多いです。
現状サバゲーフィールドにAEDの設置義務はなく、多くのフィールドが個人事業主がバイトを雇って運営するという経営状態であるため、株主への安全管理義務の説明責任もありません。
ところで下図は心肺停止後の救命率を表した救命曲線です。(出典:東京消防庁)
居合わせた人が直ちに応急処置を行なったとして、心肺停止後の救命率は5分で50%を割り込みます。AEDは心房細動への応急処置に有効ですが、それができない場合は胸骨圧迫と人工呼吸しながら、なかなか来ない救急車の到着を待つ必要があります。
事前にするべき3つの準備
水分・塩分の準備
水分と塩分は摂りすぎなくらい摂りましょう。そのくらい真夏のサバゲーは汗をかきます。
余ってもいいので、というかむしろ足りなくて水分補給を我慢する方がよほど危険なので、水は一人4リットル持ち込むことを推奨します。
ちなみに4リットルは筆者が昨年8月に湘南トスカフィールドでフルゲーム参戦したときに一日で消費した水の量です(ガチ)。
人間は水だけでは水中毒を起こしてしまうので、塩分も一緒に摂取する必要があります。ここ数年で塩飴を持ち歩く人はとても増えました。塩飴を持ち込むのはとてもいい熱中症対策です。
筆者がおすすめなのは、4リットルの水と一緒にポカリスウェットの粉を持ち込むことです。ポカリを大ボトルで買うと余らせて腐らせるのが定石ですが、粉であれば腐りません。また、粉であれば濃度を自由に調整しながら飲むことができます。
OS-1が普段は不味くて飲めたものではないのに、体調が悪いときはスルスルと体に染み込んでくるように飲めたことはありませんか?
人間の体には「今必要な栄養素」を見分ける便利なセンサーがついているようです。ポカリも「今体がこの味を求めてる…!」と感じる濃度に調整しながら飲みましょう。
薄着装備の用意
フル装備でサバゲーしたい気持ちはわかりますが、夏場はとにかく排熱が大切です。フル装備で行くつもりであれば、しんどい時のために通気性のいい装備も用意しましょう。
最近は夏場はアロハシャツでサバゲーする人も増えています。
tourist operator!
— ヨシザル (@yoshizaru1911) July 2, 2021
この前のサバゲーでの写真!この日は「観光客に扮して仕事をこなすオペレーター」のイメージで服着て遊んでた!
銃以外ミリタリーチックなものは一切なし!なかなか良い感じにできた!
ハワイで悪いことしてそう!笑笑
アロハはいいぞ!!!#アロハサバゲー pic.twitter.com/YhQ5jknM5R
半袖でプレーしている人が倒れた場合は寝かせてシャツを脱がすか破けばAEDが使えますが、フル装備でプレーしている人が倒れたら大変です。気絶した成人男性はとても重く、装備を脱がせている間にも救命曲線がどんどん下降していきます。
服装へのこだわりはサバゲーの楽しみ方の一つですが、五体満足に家に帰るのが最優先です。
自分の体を酷暑から守る装備を身につけることは、眼球を保護するためにゴーグルを装着するのと同じくらい大切なことです。
冷却方法の用意
冷却スプレー
個人で持ち込める冷却グッズは多くはありません。フィールドで冷蔵庫を使える訳ではないので、冷たいものを持ち込むのは困難です。
限定的な効果ではありますが、緊急時に患部を一気に冷却できる冷却スプレーは有効です。
服の上から吹いたり、直接吹く時は首や脇の下などに短時間にするなど、凍傷には気をつけながらご利用ください。
水
クラクラしてきたら装備を外して水をかぶりましょう。気化熱で一気に冷却です。人間打ち水です。
フィールドでの注意点
こまめかつ大量の水分補給
よく言われることですが、喉が渇いたときには体は脱水のフェーズに入っています。夏にサバゲーするときには特に意識的に水分補給をするようにしましょう。
「喉が渇いたら飲めばいいや」は自殺行為です。
BDUなどを着ているとトイレに行きづらいですが、夏場にサバゲーをしていて一度も尿意を催さないのはかなり危険です。
排泄の面倒臭さに負けて水分補給を怠ると、それよりもはるかに高い代償を支払うことになります。
躊躇なく休むこと
ゲームに参加すればアドレナリンが出て疲労感やしんどさを忘れますが、その間も体は確実に熱波に冒されています。
休憩時間に「少しでもしんどい」「ぼーっとする」などの感覚を覚えた場合は即座にゲームを休んで水分・塩分補給と体の冷却に専念してください。
しんどさを押してゲームに参加すればしんどい状態から追加で10分以上炎天下に曝されることになります。炎天下のビル街にスーツを着て10分佇むのってかなりしんどくないですか?しんどさを押してゲームに参加するのは、それを熱中症一歩手前の状態から追い討ちでやろうとしているようなものです。