エアガンのカスタムの話になると凄まじい頻度で出てくる「気密」という単語。カスタムに手をつけ始めた最初は、気密がなんのことなのかを体系的に理解することが難しいものです。
そこで、本稿では気密は
- なぜそんなに大切なのか
- エアガンのどこで必要なのか
- どのようにして確認するのか
- どのようにして高めるのか
の4点に着目して解説していきます。
なぜ気密は大切なのか
電動ガンもエアコッキングガンも、エアガンの構造は基本的に吹き矢と同じです。吹き矢はしっかりと密閉された一本の筒の片方から息を吹き込んで反対側から矢を飛ばす単純な構造をしています。電動ガンはこれを電気の力を借りながら連続して行うために複雑な構造をしているに過ぎません。
初速を稼ぐため
一番直感的にわかりやすい理由です。そりゃあ空気が漏れたら吹き矢は押し出せません。ですが、ここで大切なのは気密はすぐにわかるような空気漏れ(エアロス)よりもさらに厳密な気密性の確保です。
エアガンをカスタムしているとパーツ同士の噛み合わせが悪かったり、穴が開いていたりしてエアロスを起こすことがよくありますが、そのようなエアロスは露骨な初速低下になって現れます。例えば
箱出し0.2g弾で85m/s出ていた海外銃をカスタムしたら40m/sしか出なくなった…
みたいなことはよくありますが、これは分解して気密チェックをすれば大体解決します。
もっと厳密な気密の確保とは
パッキンを変えたら2m/s上がったよ!
みたいな話です。正直このレベルの空気の流れは分解点検では把握できません。なので、知識に基づいたカスタムをしながらトライアンドエラーを繰り返すしかありません。
そして、気密向上による初速の向上は複数の場所で行う必要があります。
詳しくは後述します。
パーツに負荷をかけないため
パーツに負荷をかけない=最低限のスプリングレートを使うと考えればOKです。
気密の保たれていないエアガンで高い初速を出そうとすると、(シリンダー容量の変更とかは一旦置いておいて)必然的にスプリングのパワーに頼らざるを得なくなります。
強いスプリングを使って初速を出すということは、スプリングを引くピストンに強い負荷がかかるということ。強い力でピストンをシリンダーヘッドに打ち付ければ、ピストンやメカボックスへのダメージも相応に高まります。
気密の必要な部位・確認・改善方法
海外製の電動ガンは気密が低いことが多いので、気密上げはカスタムの下地としてやっておくべき調整です。
最近この記事を思い立って手持ちの電動ガンをとにかく気密上げ「だけ」行ってみたらこんなことになってしまいました。スプリングはおろか、シリンダーもインナーバレルも変えていません。
これ以上気密上げるのはやめておこう… pic.twitter.com/I28uL2G0c7
— サバゲー沼 (@airsoft_numa) April 8, 2022
この銃は箱出しでは85m/sくらいしか出ていなかったので気密上げの威力がうかがい知れます。
以下では気密を取る必要のある部位を紹介していきます。説明の都合上銃の後方(空気の送り出される地点)からの紹介になります。
最初の4つはメカボックスを取り出す必要があるので、「気密とはなんぞや?」という方は触れないでもOKです。そういうものだと理解していただければ幸いです。
ピストンとシリンダーの隙間
ピストンとシリンダーの間に隙間があるとエアロス(空気漏れ)が発生します。ここでエアロスが起きると初速が露骨に下がります。
エアロス発生の有無は、ノズル(画像右端)を抑えて後方からピストンを押したときに、ピストンを前進させられるか否かで判断してください。
・ピストンヘッドのOリングが収縮してピストン径未満になっていないか
・シリンダーに空気が逃げるような傷がついていないか
上記の項目が引っかかった場合はピストンヘッドかシリンダーの、問題がある方を買い換えてください。その際はシリンダー容量にご注意ください。・
上記のチェック項目がOKなのにピストンを前進させられてしまう場合は次に進んでください。
シリンダーとシリンダーヘッドの隙間
シリンダーとシリンダーヘッドの間に隙間があると、上記のチェック項目に問題がなくてもピストンがするするとシリンダー内を前進してしまいます。
引っ張りながら一周巻いたら、シリンダーヘッドに引きつけながら、まっすぐ引きちぎるようにして切断します。
こうすることでシリンダーとシリンダーヘッドの間の隙間がなくなり、ピストンに押された空気がシリンダーとシリンダーヘッドの隙間から抜けることを防ぐことができます。
それでもダメな場合は次に進んでください。
シリンダーヘッドとノズルの間
それでもどこからか空気が漏れている場合、残る可能性はシリンダーヘッドとノズルの隙間です。
ちょっと力業ですが、一応処方箋はあります。
他のサイトでも紹介されていますが、シリンダーヘッドのノズル側先端にテーパー状の硬い何かを差し込みながら上から叩いてコンマ数ミリ広げてしまいましょう。
ノズルとチャンバーの間
M4系であれば、とうとう空気はメカボックスを出てアッパーレシーバーへとバトンタッチされる段階になりました。
このバトンタッチの段階で気密漏れが発生する可能性があるのは、ノズルが代表するメカボックス側とチャンバーの間にガタがあることです。
・ノズルのヘッド部分に凹凸はないか
チャンバーとインナーバレルの間
事実上最後に気密取りを行う部位で、最も顕著に気密取りの効果が表れる部位です。
ノズルからチャンバーへと送り込まれた空気がインナーバレルに送り込まれる際の気密は、パッキンの持つ気密能力に依存します。そしてパッキン選びとは毎年何百本も銃をカスタムしているショップのオーナーも頭を悩ませる永遠の難問です。
改めてカスタムって難しいなあ。その個体に合うパーツって違うんですよね。一辺倒にはいかないんです。機種やメーカー変わるとパッキン一つ使えなくなります。一番良い結果を探す作業になるんですよね。
— YoshiPon Airsoft (@YoshiPonAirsoft) August 27, 2020
とはいえ私たち素人がカスタムするたびに何種類もパッキンを買い集めてきて30m、40mで比較検証するのはかなり困難です。都市部に住んでいれば事実上不可能です。
海外銃だと激硬パッキンが組まれていることもあり、気密以前に精度がガバガバだったりホップ調整が超シビアだったりします。
というわけなので
本当にマルイのパッキンは優秀です。ロットの誤差もほとんどないし、季節を選ばないし、何より安いです。筆者は秋葉原に行くとマルイのパッキンを一掴み買って帰ります(会計で何個買おうとしていたかを知る)。
ダメ押しでシールテープをホップ窓にかぶらないように一巻きしてシリコングリスを塗ればOKです。
筆者は経験上これでパッキン周りから気密漏れしたことはありません。
インナーバレルの中
おまけです。飛距離や精度の話はいったん脇に置きましょう。
マルイの純正インナーバレル内径は6.08mmですが、タイトバレルであれば6.01mmのモデルがあります。
内径6.08mm×全長275mmのインナーバレルの場合、バレル容積は5250mm³ですが、6.01mm×275mmの場合は5190mm³で、差し引き60mm³、つまり1%強の気密があるという計算になります。ド文系筆者の単純計算でも1%ちょっとは初速が上がることが容易に計算できます。
実際にタイトバレルを組むともっと初速は上がりますが、その辺の計算はシリンダーの要領も加味した理論値で組んでいるガンスミス諸兄に任せましょう。