電動ガンのカスタムの話になると、色々な方向から色々なワードが飛び出します。
フィールドのセーフティでは休憩時間にカスタム談義が行われることもしばしば。
しかし、耳を澄まして雑談を聞いていると、誤ったことが語られていることも多いのが実態です。
他人の会話に口を挟むのも野暮というものなので聞き流しますが、誤った認識が少しでも矯正できればいいなあと思って今回はこの記事を書くことにしました。
電子トリガーのよくある勘違い
電子トリガーでキレッキレのハイレスポンスや!
そうとも限らないんだ
電子トリガーを入れるとレスポンスが劇的に向上するという誤解は広く蔓延しています。
しかし、電子トリガーそれ自体にレスポンスの改善効果はありません。
電子トリガーはスイッチのオン・オフなどを電気的に制御する部品です。
「など」の部分が大事。
安いものだとG&GのCM16シリーズにも搭載されています。MOSFETも搭載して3万円台前半〜と破格です。
それでは電子トリガーとはなんなのでしょうか?
電子トリガー(FCU/ETU)とは
物理トリガーとの違いは?
電子トリガーと物理トリガーの大きな概念としての違いはこれだけです。
物理トリガーには最近流行りのマイクロスイッチ式トリガーも含まれます。
ミニ四駆のスイッチと同じように、通電部位の接点を機械的に切り離すことで電源のオンオフを行うのが物理トリガーです。
それに対して電子トリガーはトリガーの引きしろやセレクターの位置に応じて通電を制御します。
高性能なモデルだとセンサーでギアの歯数を数えて電力のカットオフを行うので、毎回同じ位置でギアを止めることができます。
さらにアクティブブレーキでモーターにブレーキをかけることで、強引にモーターの動きを止めてギアの停止位置を安定させられるモデルもあります。
高価な電子トリガーユニットほど高機能で、多彩な射撃フィールを楽しむことができるようになります。
MOSFETとの違いは?
混同されやすいのが電子トリガーとMOSFET。
MOSFETを一言で表すと、
と思ってもらってOKです。
電子トリガーは供給されている電源をバッテリーにどう供給するかをコントロールする装置ですが、MOSEFTはもっと上流で電力供給を操作する装置です。
MOSFETを使うメリットはメカボの延命です。
オンオフのたびにスイッチでは小さな火花が出ますが、MOSFETは先述したようにずっとオンなので火花が発生しません。
これによってスイッチ焼けという故障を半永久的に防ぐことができます。
MOSFETは大元で電流のオンオフを制御できてしまうので、これを後述するプリコックに利用してしまうカスタムがあります。
メカボ「スイッチオフや!電流とめろ!」
に対して
MOSFET「うるせえ!まだまだ流し込んでやる!」
ができてしまうためです。
正誤関係を整理しよう
電子トリガーとレスポンスは以下のような正誤関係になっています。
それではレスポンスを改善する機能とはなんなのでしょうか?
プリコックとは
「電子トリガーでレスポンス改善」するにはプリコックが必須です。
プリコックを一口で言うと、メカボックス内での動作を先回りして行っておくことでレスポンスを早める「動作」です。
プリコックは「動作」なので、プリコック自体はカスタムではありません。
まずは抽象化されたプリコックなしの動作を見てみましょう。
プリコックなしの動作
電源が入るとギアが周ってピストンをひっぱり、
歯がなくなったところで電源がカットオフされると同時に、
スプリングが伸びて弾が発射される。
実に一般的な動作です。
それではこれをプリコックするとどうなるのか見ていきましょう。
プリコックありの動作
発射後にセクターギアが回ってピストンを途中まで引いています。
この動作がプリコックです。
1発発射することを100m走に例えるなら、
- 従来型はスタートラインから走り出す
- プリコックは50m地点から走り出す
このくらいの差があります。
プリコックなしだと通電してからピストンの歯を全部引かないといけないのに対して、プリコックありではあらかじめピストンを部分的に引いているのでフライング状態になります。
フライング分はセミオートの射撃時間が短縮されるので、「キレがいい」という評価になります。
このフライング=プリコックが可能な商品は3種類あります。
プリコック可能な商品とは?
電子トリガー
本題です。プロコック機能付きの電子トリガーを使えばプリコックが可能。
LeviathanやTitanなどの高級電子トリガーユニットは、スマートフォンのアプリと連携してプリコックの強度だけでなく、バーストやトリガー感度なども設定できます。
性能を高めるだけでなく、「撃ち味」までコントロールできるのが高機能電子トリガーユニットの特徴。
今回紹介したLevithanはガスブロのような動作を追加するオプションもある異端児です。
プリコック機能付きの電子トリガーでは当然プリコックなしの運用も可能です。
プリコック機能のない電子トリガーを使ったり、プリコック機能があってもその機能を使わなければ電子トリガー非搭載の電動ガンとレスポンスは変わりません。
ここで「電子トリガーを使うとキレが良くなる」という誤解が生じます。
プリコックつきFET
先ほど紹介したFETには、電力のカットオフディレイ機能を備えたモデルがあります。
こちらは電子トリガーとは異なり、トリガーの交換は行わずに配線交換のみで済むためよりお手軽。
電力のオンオフに関わる部分にしか干渉しできないので機能は限定的ですが、その分お手頃な価格で手に入ります。
以前紹介した激安プリコック機を作るときにもこのタイプのFETを利用しました。
機械式プリコック
プリコック方法としては最も昔からあるのが機械式プリコック。
古くは東京マルイのPSG-1に採用されているギミックです。
その機械式プリコックを可変にしたことがC.A.T.の画期的な点です。
機械式プリコックそれ自体のメリットは泥汚れに強い(光検知式電子トリガーは泥で誤動作、故障する)くらいですが、C.A.T.はテイクダウンしてDASやトレポンのようにメカボックスを眺めたりいじったりできることが支持されています。